■ 大工の独りごと / 07 命を守る家 − 本当に強い家って何だろう?
〜 机上の計算だけては計り知れないものがある 〜
近年、木造住宅によく用いられる耐力壁に 【構造用合板】 があります。
価格も安価で施工も容易であり、指定された釘を指定された箇所に打ち込めば計算で得られた耐力が
出せるというものです。
20世紀最高の発明品と賞賛する人もいますし、地震に強い家としてメーカーが売り出している住宅の多くが、
この構造用合板と金物で耐力を出しているようです。
そのほかに耐力壁としてよく知られるのが 【筋交い】 です。
この筋交いは柱と土台や梁などの横架材のあいだに斜めに取り付けられた部材で、近年ではその接合部を
金物で補強し取り付けています。
在来軸組み工法とよばれる一般的な木造住宅は、ほとんどこの合板などの面材か筋交いによって耐力を
出しています。
しかし、こういった方法で耐力を出す住宅は近年のもので、古民家など古い住宅や神社、仏閣、土蔵などには
合板も筋交いも使用していません。
では、なぜ数百年から数千年という長い年月、風雪や地震などに耐えて建ち続けているのでしょう?
こういった建物に使われている耐力壁は 【貫】 と 【土壁】 で構成されています。
この、貫と土壁は近年の建築の中で失われつつある耐力壁です。しかし、この貫や土壁も
優れた耐力壁なのだと思います。
あの有名な阪神淡路大震災でも 土蔵がくの字に変形しながら建ち続けている写真が公開されました。
あたり一面近代的な建物が瓦礫の山になっている中でだだひとつたち続けている古い土蔵は、
今を生きる私達に、何かを伝えようとしているようにも感じました。
たしかにくの字にゆがんだ建物は住み続けることは不可能です。しかし、くの字にゆがみながら住む人達に
家の外に逃げ出す時間と逃げ出せる空間を残したのです。
合板や筋交いだけでは、許容耐力を超えた時にその耐力がゼロになります。ですが、
貫や土壁は柱や土台に食い込んだり曲がったりしながらもその耐力を少なからず残すことができます。
その差が、時間と空間を生み出せることになり人の命を 守ることができる家になったのではないでしょうか?
■東工務店では、建築基準法の壁量計算では耐力壁として数値を加えることのできない【貫】にこだわり、
ほとんどの建物に【貫】を取り入れています。
同業者の設計士や工務店は意味が無く、時間とお金の無駄遣いと笑う人も多くいます。
たしかに机上の計算でその効力と耐力を関連付けることはできません。ですが、
建築士としてではなく建築に携わる職人として、数字ではなく感じたことを伝えなくてはいけないのだと
思うのです。
●兵庫県美方郡香美町香住区香住にある工務店です。設計から施工、品質管理、アフターサービスまで責任をもって提供させていただきます●
ZEHビルダー:建築士会会員:ひょうご木の匠:兵庫県住宅改修業者:クリナップ水まわり工房会員
あんしん住宅瑕疵保険取扱店(10年保証):ジャパンホームシールド地盤保証取扱店:太陽光発電取扱店(MITSUBISHI認定施工店)